起立性低血圧と リハビリテーション 病態理解を中心に。

Orthostatic hypotension新人さん

患者さんを起こすと、血圧が下がってしまい、離床が進まなくて、、、。

急性期の患者さんを担当するとよくあることだね。

その顔でさも、当たり前のように言われても、、、。

どのようにして、離床をすすめていけばいいの?教えてよ。

わかった。まずは、起立性低血圧の原因を知ることがポイントだよ。

  • 起立性低血圧 の症状で離床がすすまなくて困っている
  • 疾患や症状ごとに詳しく原因を解説。アプローチの参考となります。
  • 明日からの臨床ですぐに役立つ知識です。

今日はリハビリで頻繁に経験する患者さんの 起立性低血圧 について考えてみましょう

脳血管障害、(整形)外科、内科どの科の患者さんを担当しても、起立性低血圧の症状に遭遇します。

よくある症状だけに、リハビリでは、

「抗重力位に慣れてもらうしかない。とにかく起こしていこう。」的な介入になりがちです。

しかし、起立性低血圧の原因によっては “離床 一本やり” のアプローチだけでは解決しないことも多いです。

起立性低血圧の定義 

起立性(体位性)低血圧は,立位をとった際に生じる過度の血圧低下である。コンセンサスに基づく定義は,20mmHgを上回る収縮期血圧の低下,10mmHgを上回る拡張期血圧の低下,またはその両方である。症状としては意識の遠のき,ふらつき,めまい,錯乱,霧視などが,起立後数秒から数分以内に起こり,臥位により速やかに消失する。患者によっては,転倒, 失神を起こす場合もある。運動または大食が症状を増悪させることもある。その他に併発する症状および徴候のほとんどは原因に関連したものである。”

MSDマニュアルプロフェッショナル版より引用

訓練中、患者さんを起こした時に、 上の血圧 が20mmHg低下するか、下の血圧 が10mmHg低下するだけで、起立性低血圧状態 といえることになります。 

このような場面はけっこう、頻回に遭遇しますよね。?

起立性低血圧の原因

循環血液量の低下

脱水 

多くの文献で起立性低血圧の原因でもっとも多いものが、脱水 と書かれています。

特に呼吸器疾患や心疾患の患者さんの場合、利尿薬を使用し、体内の水分を排出する治療が行われることが多いです。

そのような状態では体内の水分が過剰に減少し、血管内を流れる水分量=血液が減少し、血圧も低下します。

IN OUTバランスを良く把握して、 脱水状態にないか、アセスメントすることが重要です。

もし患者さんが脱水状態にあれば、いくら起こしても 起立性低血圧が改善することはありません。

点滴などでの補液が必要となります。

医師、看護師とも治療方針を相談しながら、リハの介入をすすめていく必要があります。

出血

外傷などの、目に見える出血が確認できる状態であれば、わかりやすいと思います。

出血により血液量が減少し、血圧が低下します。

小腸、大腸などの消化管出血など目に見えないところで出血していることもあります。

原因となる疾患の治療を実施し、出血を止めることが必要です。

自立神経性

自立神経とは

神経は「中枢神経」=脳と脊髄 
   「末梢神経」=脳と脊髄から出て体中に張り巡らされている  にわかれます。

末梢神経は 「体性神経」=意思によって身体の各部を動かす
      「自律神経」=意思に関係なく刺激に反応して身体の機能を調整する

Orthostatic hypotension

自律神経障害を引き起こす代表的な疾患

・脳血管障害

脳梗塞、脳出血により脳内に損傷がおきると、自律神経を調節する機能が障害されることは大変多いです。

・パーキンソン病

中脳にある黒質からドーパミン(神経伝達物質)が分泌されなくなる病気です。(血圧上昇を促すノルアドレナリンはドーパミンが変換されて作られます)。

ドーパミンには交感神経を優位にし、血圧の上昇を促す作用があります。

起立性低血圧の症状は初期にはあまりみられないが、進行期してくると、症状が認められるようになります。

・レビー小体型認知症

レビー小体の影響により、神経伝達に影響をきたします。そして自律神経がうまく働かなくなります。

レビー小体とは
脳の神経細胞である、「αシヌクレイン」という、たんぱく質を核とした物質です。健常では大脳皮質にこの物質が沈着することはありません。

・糖尿病性末梢神経障害

糖尿病の既往があると、起立性低血圧を引き起こしやすくなります。

血圧を一定のレベルに保つための仕組みは?

血液が流れることにより、大動脈弓や頸動脈小体にある ”圧受容体” が刺激されると、

交感神経の興奮を生じさせるアドレナリンが分泌されます。

アドレナリンの分泌により
「脈拍を速める」、「心臓の収縮力を増す」、「足の血管の緊張を高める」 などの、
 血圧を維持しようとする反射がみられるようになります。

糖尿病ではこの交感神経の反射弓(反射のおこる経路)が障害され、アドレナリンの分泌が鈍くなり、起立性低血圧が生じると考えられています。

皆さんも糖尿病にかかると、手足の末梢の感覚鈍麻や しびれ がおこることはご存じかと思います。神経の伝達がうまくいかなくなる原因は?

神経障害の原因をもう少し掘り下げてみましょう。

神経に余分な糖が沈着することにより、神経細胞を膨化(体積が増加すること→膨らむこと)させ、種々の神経障害を引き起こします。

また神経を栄養する血管の変化により神経組織の血流低下も起こってきます。

この2つの原因により神経障害がひきおこされます。

その他、・アミロイドニューロパチー ・多系統萎縮症なども自律神経障害の原因となります。

薬剤の影響

  • 降圧剤
    血圧が下がり過ぎてしまうこともあります。
  • 利尿薬
    尿として排出される水分が増えます。体内の水分量が減少し、 →脱水
  • 血管拡張薬
    血管が拡張することにより、血圧は低下します。

主治医や薬剤師、看護師と相談して薬の調整、変更等が可能か相談しましょう。

心臓・血管の病気

心臓のポンプ機能が弱っているため、循環する血液の量が減少する。そのため血圧も低下します。

  • 心不全
  • 心弁膜症

いずれも原因疾患の治療が第一選択です。

リハビリテーションアプローチ

  • ゆっくりおきあがる
  • 腹部に力を入れながら起き上がる
  • 起立前に足関節の背屈運動を実施する
  • 腹帯、弾性ストッキングを着用する
    この3つはいずれも静脈還流を促すための方法です。
  • 起立台を使用し、少しずつ角度を上げていき、自律神経の調節機能を慣らしていきます。

まとめ

起立性低血圧の症状をきたす、原因を除去することが基本です。

これは、医師や看護師、薬剤師の分野であり、直接リハビリ職が何かできるわけではありません。

しかしリハ介入をして原因を考察し、補液や、薬剤の調整が必要であると判断した場合は、すぐに相談し、治療方法を再度検討してもらいましょう。

普段からの他職種との連携が重要になってきます。

その後、自律神経調整機能を賦活化させるために座位訓練、立位訓練へと繋げていきます。

また、各種検査データの理解、正しい解釈が必須となります。以下の記事を参考にしてください

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