
MMSEも認知症の検査としてよく利用されているんだってえね~。

日本ではHDS-Rが多い印象だけど、施設によってはMMSEをメインで使っているところもあるよ。

そっか。それではしっかり、おぼえなきゃね?

ポイントを押さえて、しっかりと理解しよう。
- MMSEてどんな評価なの?
- 実施上、採点上のポイントは?
- HDS-Rとの使い分けは?
こんな悩みを持つ、学生さん、新人さんにおすすめです。
- MMSEの概要、HDS-Rとの使い分けがわかります。
- 実施、採点にあたっての迷い易いポイントがわかります
- 実施する時の基本的な考え方、配慮のポイントがわかります
MMSEとは
長谷川式認知症スケールと同じく、“認知症” かどうかを診断するための、簡便なスクリーニング(ふるいわけ)検査です。
ご存じかとは思いますが、この検査のテスト結果だけで、認知症であると「確定診断」をくだせる訳ではありません。
認知症であるかの診断するための、多くの項目の1つに過ぎません。
読み方はは MMSE(エム・エム・エス・イー:Mini Mental State Examination)
認知症のスクリーニング検査としては、国際的にMMSE(エム・エム・エス・イー:Mini Mental State Examination)が主流です。ちなみに私の勝手な日本語訳は「簡易心理検査」です。
文献によると、HDS-Rは1974年に 長谷川和夫医師 によって開発され、MMSEが1975年アメリカで開発されました。
長谷川式の方が1年早く、開発されたことになります。この2つのテスト(なぜか?)、設問内容で類似する点も多いです。
テストを行う前のポイント
ほとんどの方は自分の知的レベルを試されるようなテストをされることを、快くは思はないでしょう。
あたしの臨床経験からも、これから検査をすることを告げると、「この方、あきらかに緊張しているなぁ」と感じる事も多いです。
ですから、リラックスして、前向きに、一生懸命に行ってもらえるような雰囲気、環境作りが重要です。
集中できる場所で実施する。
検査をする場所は検者であるあなたと、被検者である患者さんのみの空間が望ましいです。
また検査中に人の出入りがないようにしましょう。
ただでさえ、被検者は緊張していて普段通りに答えることは困難な状況です。
質問者は被検者が設問に答えることに集中できる環境を用意しましょう。
また カレンダーがない場所で行いましょう。日付を確認しようと、制止しても、なんとか、カレンダーをみつけようとする患者さんも多いです。
対象者の状態を確認する
難聴はないか?
ある場合はゆっくりとした、大きな声で話しましょう。また場合によっては筆談を交えることも有効です。
失語症はないか?
カルテ等で確認しておきましょう。
既往歴に脳血管障害のある場合は注意しましょう。この検査は口頭または書字により答えを表出します。失語症の有無は点数の解釈に大きく影響します。
失語症のある方を検査した時は、その旨を、検査用紙や、カルテに記載しておきましょう。
うつや、その他の精神疾患の既往、状態はどうか?
うつ状態の時は記憶も障害されます。
医師から認知症ではないか?ということで、検査の依頼があるますが、本人、家族に問診をしたり、答えている時の様子からどうも、うつ状態で一時的に記憶の機能が低下しているのでは?と判断することもあります。
そのように判断した時もその根拠と共にカルテに記載しておきましょう。
検査を実施する上で、配慮をしましょう。
時折、はじめの数問を答えた後に、「こんな簡単なことを聞くなんて、俺を馬鹿にしているのか?」と怒りだす方もいます。特に男性に多いです。
また中には「わざと間違って答えてやる。または やった。」なんていう人もいます。
プライドを傷つけないような配慮が必要です。特に現役時代はバリバリ仕事をしていた男性には要注意です。テスト開始前に、以下の言葉を添えることも有効です。
「当院では、ある程度の年齢の方には皆さんにやってもらっていますよ。」
「質問内容で気分をわるくなさらないようにしてくださいね。ごめんなさいね。」
あたしは、60代から70代の男性には上記の声掛けをするようにしています。
用意するもの
- MMSEの評価用紙
- 筆記用具(鉛筆と消しゴム)
- 時計または鍵
- 白紙のプリント
MMSE 実施上のポイント 1~2 見当識
1.日付の見当識
ポイント
カレンダーが無いか、もう一度確認しましょう。患者さんの中には後ろを振り返ったりして必至にカレンダーを探そうとする方もいます。目につくところにあるカレンダーは全て撤去しましょう。
年、月、季節、日、曜日どこから答えてもらっても構いません。また季節の変わり目を表す言葉、「梅雨」、「初夏」などでも正答とします。
2.場所に関する見当識
ポイント
病院名は 「正式名称」 でなくてもOKです。通称、略称でもかまいません。
MMSE 実施上のポイント 3~6
3.言葉の記銘
ポイント
「これから言う3つの言葉を真似して言ってみてください」と伝えます。
「桜・猫・電車」の3つの単語を1秒の間をおいて、1つずつ区切って3つ続けて聞かせ、相手に繰り返して言ってもらいます
最後に、「また後で聞きますのでよく覚えておいて下さい」と伝え、3つの単語が答えられるようになるまで繰り返してください。ただし、6回繰り返しても覚えられない場合はそこで打ち切ります。
4.計算
ポイント
100から順に7を引くことを5回繰り返します。途中で「93でしたっけ?」などと確認を求められることもありますが、答えてはいけません。当然「93から7を引くと」などのヒントを与えてもいけません。
5. 3つの言葉の遅延再生
ポイント
答える順番は問いません。また答えられない時は、個別にヒントを与えます。
「植物」「動物」「乗物」です。など
6.物品呼称
ポイント
時計(鍵)を見せながら、「これはなんですか?」 鉛筆を見せながら、「これはなんですか?」と質問します。ヒントを与えてはいけません。
MMSE 実施上のポイント 7~11
7.復唱
ポイント
口頭でゆっくりと「みんなで力をあわせて綱をひきます」と言います。
被検者が、1回で正確に復唱できた場合のみ、正答とします。
8.口頭の、3段階の命令
ポイント
口頭でゆっくりと指示を出します。
9.書字理解
ポイント
紙を置いた状態で、「次の文章を読んで、その指示に従ってください」と口頭で指示をだします。紙には「目を閉じてください」と書いてあります。
文章をよむのは、音読、黙読、どちらでもかまいません。
10.自発書字
ポイント
紙を示して、「ここに何か文章を書いてください」と指示します。例文を示してはいけません。
・主語がなくても、意味のある文章なら正答とします。
・また「四字熟語」も正答とします。
・名詞のみは誤答となります。
11.図形模写
ポイント
図形が書かれた紙をみせながら、「この図形を正確に模写してください」と指示し、鉛筆と紙を渡します。正答の条件は
・角が10こある。かつ 2つの5角形が交差している。
2つの条件をみたしていることが必要。
MMSE 採点方法と解釈
- 27~30点 正常
- 22~26点 軽度の認知症の疑いがある。
- 21点以下 認知症の疑いが強い
HDS-Rとの使いわけ
トイレ動作の自立を判断する場合はMMSEで評価した方が良いです。
多くの文献でMMSEの点数と、トイレ動作の自立の相関性が示唆されています。
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